Thursday, July 19, 2012

ヘリテージ:投票に写真つき証明書は必要か?

 

 

The Heritage  Foundation 
ヘリテージ ワシントン ニュースレター No.50
 横江 公美 アジア研究センター 2012年7月19日  

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投票に写真つき証明書は必要か?   
 
11月6日の大統領選挙投票日まで5ヶ月を切った。今回の選挙で取り沙汰されているのが、投票者の身分証明についてである。
 
日本では期日前投票でも当日投票でも、葉書で届いた投票券を持っていくだけで、免許証などの本人確認は行われていない。考えてみれば、運転免許証かパスポートぐらいしか写真つき証明書は浮かばない。日本で身分証明によく使われる保険証は、写真付ではない。
 
アメリカでも、かつては投票時の身分証明書の提示は議論されることはなかった。
だが、2000年大統領選挙が流れを変えた。フロリダ州の古い投票用紙と読み取り機がもたらした投票結果は混乱を極め、投票日から1ヶ月が過ぎても大統領が決まらない事態に陥った。
 
1990年代では、アメリカ在住の外国人のところに投票券が届いたと言う話も耳にしたことがあるほどだ。
 
2000年以後、選挙の質の向上が議論されるようになり、投票時に身分証明書の提示を義務付ける州が2003年からあらわれた。現在、なんらかの形で身分証明を必要とする州は50州中30州にのぼる。その中で写真付のIDを必要とする法律があるのは17州(アラバマ、フロリダ、ジョージア、ハワイ、インディアナ、アイダホ、カンザス、ルイジアナ、ミシガン、ミシシッピ、ニューハンプシャー、ペンシルバニア、サウス・カロライナ、サウス・ダコタ、テネシー、テキサス、ウィスコンシン)である。だが、アラバマ、ミシシッピ、ニューハンプシャー、サウス・ダコタ、テキサス、ウィスコンシンでは、施行されていない。
 
ヘリテージ財団は、以下のような不正投票を避けるために、身分証明を提示する政策を支持している。
・身代わり投票
・虚偽の有権者登録による投票
・複数の州で登録している同一人物による複数投票
・選挙権のない外国人による投票
これらを防止することによって、民主主義の整合性が維持されるとのことだ。
 
一方、身分証明書の提示に反対する団体もある。その根拠は、身分証明の提示は、特にアフリカ系アメリカ人やヒスパニック系といったマイノリティーの投票行動を妨げるからだ。
 
アメリカでは、投票するのに有権者登録が必要である。投票方式を複雑にすればするほど言葉に疎い割合が多いマイノリティの投票を阻むことになる、と従来言われてきた。
 
そのため、有権者登録を推奨するマイノリティ向けの組織は全米中に存在する。オバマ大統領が大学院に進学する前、まさに有権者登録を手助けする非営利団体で働いていた。
 
州ごとの結果で州の代表委員の数を勝者が総取りするアメリカの選挙方式では、州ごとに厳しい選挙戦が繰り広げられる。2000年のフロリダ州の投票の混乱は1784票で選挙の行方が決まることを全米に知らしめた。
 
1票の価値が認識されたのである。
 
ジョージア州では、投票者の身分証明書の提示を義務付けたと同時に、身分証を持たない人に無料で写真付IDカードを発行することも決めた。
 
ヘリテージ財団のハンス・ボン・スパコフスキーによると、2004年から2010年の間で、ヒスパニック系と黒人の投票者は大幅に増加しており、2000年から2010年にかけての人口増加よりも大きという。そのため、投票者のID提示を義務付けることがマイノリティーの投票を妨げるという批判は当たらないと主張する。 
 
テキサス州では、最近、ジョージア州と類似する法律が通った。だが、連邦政府の司法省によりその施行が差し止められた。現在、テキサス州は司法省を相手取って訴訟を起こし、現在ワシントンDCの地方裁判所で審議中である。
 
 
さて、大統領選挙までに、このなんともアメリカらしい民主主義の議論はどんな方向に落ち着くのだろうか、興味深い。


編集後記

オリンピック選手の開会式の揃いの衣装が問題になっている。
 
衣装はアメリカを代表するデザイナー、ラルフ・ローレンが作ることに決まり、衣装も発表された。紺のジャケットに白いシャツといかにもアメリカのラルフ・ローレンらしいデザインだった。
 
だが、議員から、反発の声が上がった。
 
民主党の上院院内総務のハリー・リード議員は「全部、燃やしてしまえ」とも発言しているほどだ。
 
その理由は、その衣装が中国製だったからだ。
 
現在、アメリカの服飾メーカーは、廉価製品はアジアや南米で作り、最高級品はヨーロッパで作っている。ラルフ・ローレンも紫ラベルと呼ばれる際高級品はヨーロッパで作られ、それ以外のほとんどは中国産である。
 
価格競争のため、メード・イン・アメリカの洋服の数は少なくなっている。
一方、オリンピック委員会は困惑する。
 
実は、洋服の工場が外国に移転したことは最近、始まったことではない。今までの開会式の衣装もデザイナーはアメリカ人であったが、産地はアメリカではなかった。なんで、今回は問題になっているのか。そして、全てアメリカ産にしたら予算が足りない、とオリンピック委員会はコメントを発表した。
 
ナイキといった世界にアメリカが誇るスポーツメーカーのほとんどがアメリカ以外に工場を持っている。
 
グローバル経済が進むにつれて、産地の意味は今までとは異なるようになる、と考えるきっかけとなるラルフ・ローレン事件である。
 
視点を変えれば、不況の今だからこそ、問題になるとも思われる。なぜなら、大統領選挙においても同じような事件は起きている。民主党は、共和党のミット・ロムニーが過去2年間だけ税金申告書公開したが、それ以前のものも公開すべきだと攻撃している。
 
それに対しロムニー陣営は、2004年民主党の候補者だったジョン・ケリーも2008年共和党の候補者だったジョン・マケインも妻は全米有数の資産家だが、誰も税金申告書の公開を主張しなかった、なぜ、今?と反論しているからだ。

横江 公美
客員上級研究員
アジア研究センター

Ph.D(政策) 松下政経塾15期生、プリンストン客員研究員などを経て20117月からヘリテージ財団の客員上級研究員。著書に、「第五の権力 アメリカのシンクタンク(文芸春秋)」「判断力はどうすれば身につくのか(PHP)」「キャリアウーマンルールズ(K.Kベストセラーズ)」「日本にオバマは生まれるか(PHP)」などがある。

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