10月3日夜、最初の大統領候補者によるテレビ討論会が行われた。討論会が終わるや、予想に反して、ほとんどのメディアが共和党のミット・ロムニー候補が圧勝と報道した。
選挙の現場で育った自称選挙コンサルタントの私から見ると、勝負はすでに二人が最初に話したところで決まっていた。
ロムニーはテレビ討論会で必要な3つの点で圧勝していたのだ。
1つは、見た目である。両者ともほとんど完璧なアメリカン・エリートの見た目を持つ。鍛えた姿勢にスーツのラインも文句の付けどころがない。だが、今回は、ロムニーはネクタイの色で画面を制した。ロムニーは赤いネクタイに対してオバマ大統領は青いネクタイ。バックが青なので、ロムニーが画面に映ると圧倒的に華やかになる。
ケネディ元大統領が制したニクソン大元大統領とのアメリカ初のテレビ討論会は、ラジオを聴いている人はニクソンが勝利したと思ったが、テレビを視聴した人は圧倒的にケネディ勝利だった。この違いが、ケネディ勝利に導いたと言われている。 しかもロムニーは、開始早々に、苦手とされるジョークを決め会場を和やかにしていた。
2つ目は、議論を引っ張るプレゼン力である。
今回の討論会は国内政策についてであった。そこで司会者からの最初の質問は、国内政策について二人の違いだった。ロムニーは、5つの点で異なっていると明らかにしたうえで、エネルギー、税金、中小企業対策など5つの分野について語った。
一方、オバマは4年前のアメリカの惨状を語ったうえで、今までの成果をとりとめもなく語った。とりわけ、力を入れて語ったのが教育だった。
3つ目は、議論を受ける要約力と切り返し力である。
ここでも、ロムニーは要約力を発揮していた。なんとなくまとまらないオバマの議論を「5つの点で反論する」、と総括して切り返していた。
オバマ大統領もロムニー元マサチューセッツ州知事も、知識の量と理解の深さには疑いがない。
アメリカン・エリートの典型とも言えるこの二人のテレビ討論会を見ていると、こんな議論が日本でも可能だろうかと、純粋に羨ましく感じてしまう。
大統領選挙は、候補者が大統領になっていく候補者にとっても教育課程でもある。ロムニーは共和党予備選挙でほぼ毎週、テレビ討論会をこなしていた。民主党は予備選挙は信任選挙だったので、オバマ大統領にとっては2012年選挙では初めてのテレビ討論会である。
大統領候補によるテレビ討論会はまだ2回残している。次回はオバマ大統領が巻き返しを図ることは確実だ。
考えてみれば、大統領選挙で両党の候補者がいずれもザ・エリートというのは珍しい。
選挙はイマイチ盛り上がらないと言われているが、この二人のテレビ討論会は、将来、テレビ討論会の教科書と言われるようになるのではないかと思っている。
キャピトルの丘
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