最近のワシントンでは、スーザン・ライス国連大使が注目を集めている。ヒラリー・クリントン国務長官の最有力後任と見られているからだ。
同じライスでも、共和党のコンドリーサ・ライス元長官とは異なり、スーザン・ライスは、議論の多い人物である。共和党は国連大使としての発言から資質を疑問視する声が上がっており、民主党内部から、資質は問題ないが性格に難がある、という内緒話が聞こえてくるほどだ。
アメリカでは大統領が、数千人の役人を指名する権限を持っている。だが、省庁のトップである長官や国連大使といったトップ人事は、日本のように指名したら、「はい、決定」と言うわけにはいかない。
長官指名では、1月に入ってから上院で承認されることが不可欠であり、その過程で、プライベートが洗いざらいに明かされるといったマスコミからの洗練を受ける。
すでに連邦議会では、有力候補のスーザン・ライスを巡る駆け引きが始まっている。しかも、ライス大使は、クリストファー・スティーブンス大使ら4人が殺された9月11日起きたリビアのベンガジ領事館襲撃事件について彼女自身が不適切であったと認める発言を行っているからだ。
その発言とは、9月11日の事件の直後に、ライスが「これはテロ攻撃ではなく、デモの中から自然に起きた」と言ったことである。後に情報は二転三転し、最終的にテロ攻撃であったとホワイトハウスも声明をだした。ライスも間違いを認めている。
11月27日、ライスは共和党上院議員と会談に及んだ。この会談についてはアメリカのマスコミは注視していた。名目上は、9月11日のリビア・ベンガジの領事館襲撃についてのヒアリングであるが、1月に行われる指名承認の可能性を占う意味合いが強かったからだ。上院は民主党が過半数を握るが、共和党はフィリバスターと言う手法を使えば、承認をストップできる可能性がある。
ジョン・マケイン、リンジー・グラハム、そして女性のケリー・エイヨットの3人の共和党上院議員が会談に当たり、ライスは、マイク・モレルCIA長官代行を同行した。
果たして、会談後のインタビューでマケインは、ライスへの疑念が一層深まったと語った。じつは、マケインは会談以前は3人の中でもっともライスに理解を示しており、会談直前には「もしきちんとした説明があれば、指名承認に賛成する」と言っていた。それだけに、会談は、承認への道が険しいことを示している。
その翌日、ライスは、共和党のスーザン・コリンズ上院議員らとの会談も持ったが、共和党のなかでも穏健派で知られるコリンズすらも、ライスには疑問が残ると語った。
政府高官の上院でのやりとりは真剣勝負だが、結果としては大統領指名の99%が承認されている。
というのも、マスコミが候補者の私生活を隅から隅まで追うため、「政治的不適正」な事実が発覚すると高官候補は自ら辞退したり、大統領が指名を撤回する。最近では、1993年、司法長官に指名されたゾイ・ベアードは、不法移民のベビーシッターを雇っていたことが判明し、大統領が指名撤回に追い込まれた。
スーザン・ライスは指名されると、マスコミの洗礼も待っている。
日本では、アメリカの政治任命が必要だとの声もよく聞かれる。日本に導入する場合、このプロセスの厳しさの導入も必要になるだろう。
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